子宮筋腫・腺筋症の
HIFU治療を専門医が解説
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子宮腔を変形しない小さな筋腫でも体外受精に影響する?

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最新メタ解析から分かってきたこと 

子宮筋腫が不妊の原因になるか、不妊治療に影響するかという疑問にはいろいろな意見があります。最近日本生殖医学会が出した生殖医療ガイドライン2025では影響を認める場合があるとしています。以下の論文は小さな筋腫でも体外受精の成績の影響することがあることを認めています。(堤治)

はじめに

子宮筋腫は、生殖年齢の女性に非常に多くみられる良性腫瘍であり、その有病率は最大40%に達するとされています。妊娠を希望する患者さんにとって、筋腫が妊娠や体外受精(IVF)の結果に影響するかどうかは重要な問題です。 

これまでの研究では、

  • 子宮腔を変形する粘膜下筋腫は妊娠率を低下させる 
  • 子宮の外側に位置する漿膜下筋腫は影響が少ない

という点については比較的見解が一致していました。 

一方で、子宮腔の形を変形させない筋層内筋腫については、体外受精の成績に影響があるという報告と、影響はないとする報告が混在しており、結論が出ていませんでした。 

今回紹介する研究では、6cm以下で子宮腔変形を伴わない筋層内筋腫がIVFの結果に与える影響について、複数の研究を統合したメタ解析により検討されています。

研究の概要

本研究はPRISMAガイドラインに準拠した系統的レビューおよびメタ解析です。 

対象となった条件: 

  • 自家卵子を用いた体外受精 
  • 6cm以下の子宮腔非変形性筋層内筋腫 
  • 年齢を一致させた対照群の存在

最終的に5研究、合計1,912名(筋腫あり520名、筋腫なし1,392名)が解析対象となりました。 

評価項目: 

  • 生児獲得率(live birth rate) 
  • 臨床妊娠率 
  • 着床率 
  • 流産率

主な結果

1.6cm以下でもIVF成功率が低下する可能性

子宮腔に変形がない場合でも、筋層内筋腫が存在すると生児獲得率は有意に低下していました。 

生児獲得率:

  • オッズ比 0.48(95% CI 0.36–0.65)

この結果は、見た目に子宮腔が正常であっても、筋腫がIVF結果に影響する可能性を示唆しています。

2.サイズによる違い 

筋腫の大きさによって影響は異なりました。 

4cm以下: 

  • 生児獲得率、妊娠率、着床率が低下 

2cm以下: 

  • 有意差なし 

現時点では、非常に小さい筋腫では影響が限定的である可能性があります。 

3.筋腫の位置の重要性(FIGO Type-3)

子宮内膜に近接するFIGO Type-3筋層内筋腫では、 

  • 生児獲得率の低下 
  • 臨床妊娠率の低下 
  • 着床率の低下

が認められました。 

筋腫の位置、とくに子宮内膜との距離が重要な要素であることが示唆されています。 

4.流産率

全体解析では明確な差は認められませんでしたが、高品質研究のみを対象とした解析では、流産率が上昇する傾向がみられました。

なぜ小さな筋腫でも影響する可能性があるのか 

従来は、筋腫による不妊は物理的な圧迫などの機械的要因が中心と考えられていました。 

しかし最近では、以下のような生物学的機序が提案されています。 

  • 子宮内膜受容性の低下(HOXA10、LIFなどの発現低下) 
  • 筋腫由来のTGF-β3による内膜機能への影響 
  • 子宮収縮パターンの変化

これらの要因が着床環境に影響する可能性があります。

手術は必要か 

IVF前に小さな筋層内筋腫を手術で取り除くべきかについては、現時点では明確な結論は出ていません。

理由:

  • 多くの研究が観察研究でありエビデンスの確実性が低い 
  • 高品質なランダム化比較試験が不足している

また、筋腫核出術には以下のリスクがあります。

  • 出血 
  • 癒着形成 
  • 将来的な妊娠時の子宮破裂リスク 
  • 帝王切開率上昇

したがって、すべての患者に手術を推奨することは現時点では適切ではないとされています。

治療方針を考える際のポイント 

以下を総合的に判断する必要があります。

  • 筋腫のサイズ(特に2〜6cm) 
  • 子宮内膜との距離 
  • 年齢および卵巣予備能 
  • これまでの治療経過 
  • 移植回数

まとめ

子宮腔を変形していない筋層内筋腫であっても、体外受精の成績に影響する可能性があります。 

特に、2〜6cm程度の筋腫や子宮内膜に近い位置に存在する筋腫では注意が必要です。 

ただし、手術の適応については慎重な判断が必要であり、すべての患者に一律に手術が推奨されるわけではありません。個々の状況に応じて医師と十分に相談しながら方針を決定することが重要です。

Murat Erden, Esra Uyanik, Mehtap Polat, Irem Yarali Ozbek, Hakan Yarali, & Sezcan Mumusoglu. (2023). The effect of ≤6 cm sized noncavity-distorting intramural fibroids on in vitro fertilization outcomes: A systematic review and meta-analysis. Fertility and Sterility, 119(6), 996–1007. https://doi.org/10.1016/j.fertnstert.2023.02.018