子宮腺筋症と不妊症 論文解説(堤 治)
子宮筋腫は聞いたことがあるけれど、子宮腺筋症とはどんな病気でしょうかという方が多いと思います。子宮筋腫、子宮腺筋症は子宮にできる良性疾患といわれますが、私の経験では子宮腺筋症が痛みと不妊の原因になる厄介な病気だと思います。ここでわかりやすく解説してありますので、勉強してください。
以下は、Journal of Assisted Reproduction and Genetics (2022年)に掲載された総説論文をもとに整理した解説です。
子宮腺筋症と不妊症について― 妊娠を希望されている方へ ―
子宮腺筋症とはどんな病気ですか?
子宮腺筋症(しきゅうせんきんしょう)とは、
本来は子宮の内側にあるはずの子宮内膜の組織が、子宮の筋肉の中に入り込んでしまう病気です。
以前は「出産経験のある女性に多い病気」と考えられていましたが、
最近では 妊娠を希望している若い年代の女性や、不妊症の検査中に見つかることも増えています。
超音波検査やMRI検査の進歩により、
手術をしなくても診断できるようになったことも、発見が増えている理由の一つです。
子宮腺筋症があると、妊娠しにくくなりますか?
この点について、多くの研究をまとめた解析(メタアナリシス)が行われています。
その結果、子宮腺筋症がある方では、
- 体外受精などの生殖補助医療(ART)における妊娠率が低下する
- 出産まで至る確率(生児獲得率)が低下する
とが、複数の研究で一貫して報告されています。
ある大規模な解析では、
体外受精後の妊娠率が約28%低下すると報告されています。
ただし、年齢や他の病気(子宮内膜症など)の影響も大きく、
「腺筋症だけが原因」と単純に言い切れるわけではないことも、論文では強調されています。
流産との関係はありますか?
妊娠率以上に、流産との関連は一貫した結果が出ています。
複数の研究をまとめた解析では、
- 子宮腺筋症がある方は
流産のリスクが約2倍以上に高くなる
と報告されています。
例えば、ある解析では
- 腺筋症がある方の流産率:約32%
- 腺筋症がない方の流産率:約14%
という結果でした。
この傾向は、体外受精でも自然妊娠でも、ほぼ共通して認められています。
なぜ子宮腺筋症が不妊や流産に関係するのですか?
正確な原因はまだ完全には分かっていませんが、
論文では次のような仕組みが考えられています。
① 子宮内膜の「着床しやすさ」が低下する
腺筋症のある子宮では、
- 慢性的な炎症
- 酸化ストレスの増加
などが起こりやすく、
受精卵が着床しにくい環境になる可能性が示されています。
② 子宮の形や動きへの影響
腺筋症によって、
- 子宮の中の形が変わる
- 子宮の収縮(蠕動運動)が乱れる
ことで、
- 精子の移動
- 受精卵の定着
に影響が出る可能性があると考えられています。
妊娠後の経過への影響はありますか?
子宮腺筋症は、
- 妊娠率や流産率だけでなく
- 妊娠中・出産時の合併症のリスクとも関連しています。
複数の大規模研究をまとめると、腺筋症のある方では、
- 早産
- 赤ちゃんが小さく生まれる(SGA)
- 妊娠高血圧腎症
- 帝王切開
- 分娩後出血
などのリスクが高くなることが報告されています。
一方で、
- 非常に重い早産
- 新生児の重篤な合併症
については、明確な差がないとする報告もあり、
すべてのリスクが一様に高くなるわけではありません。
治療をすると、妊娠の可能性は改善しますか?
現時点では、
「これが標準治療」という国際的な統一ルールは存在しません。
しかし、論文では
- 手術療法(子宮を残す手術)
- 薬物療法(GnRHアゴニストなど)
- それらを組み合わせた治療
によって、
妊娠率や出産率が改善する可能性があることが、複数の研究で示されています。
特に、
- 限局型(焦点性)の子宮腺筋症
- びまん性に広がるタイプではない場合
の方が、治療後の妊娠成績が良好である傾向が報告されています。
この論文から分かる大切なポイント
- 子宮腺筋症は、不妊症や流産と関連があると考えられている
- 妊娠率の低下だけでなく、流産率の上昇は比較的一貫した結果
- 妊娠後の経過にも影響する可能性がある
- 治療によって妊娠成績が改善する可能性はあるが、
最適な治療法はまだ確立されていない - 年齢や他の病気の影響も大きく、個別の判断が重要
最後に
子宮腺筋症があっても、妊娠・出産に至る方は多くいらっしゃいます。
大切なのは、
- ご自身の腺筋症のタイプ
- 年齢
- これまでの治療経過
をふまえて、主治医と一緒に治療方針を考えることです。
この説明は、
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といった疑問をお持ちの方が、
科学的根拠に基づいて理解するための情報整理としてまとめたものです。
(出典:Gaby Moawad, Mira H Kheil, Jean Marc Ayoubi, Jordan S Klebanoff, Sara Rahman, Fady I Sharara. (2022). Adenomyosis and infertility. Journal of Assisted Reproduction and Genetics, 39(5), 1027–1031. https://doi.org/10.1007/s10815-022-02476-2