子宮筋腫で妊娠したい方へ|手術以外・お腹を切らない日帰りHIFU治療という選択肢
妊娠したいけれど、子宮筋腫がある。手術はできれば避けたいし、お腹も切りたくない——外来では、このようなご相談をよく受けます。
子宮筋腫があるからといって、必ず妊娠できないわけではありません。また、子宮筋腫が見つかったからといって、必ず手術が必要になるわけでもありません。一方で、筋腫の場所や大きさによっては、妊娠のしやすさ、流産、妊娠中の経過に関わることがあります。
だからこそ、妊娠を望む方の子宮筋腫治療では、「手術するか、何もしないか」の二択で考えるのではなく、手術以外の方法や、お腹を切らない治療も含めて、一人ひとりに合った選択肢を検討することが大切です。
この記事では、妊娠を希望する方の子宮筋腫治療に携わってきた立場から、手術以外・お腹を切らない治療としてのHIFU(高密度焦点式超音波)が、妊娠を望む方にとってどのような選択肢になり得るのかを、手術とHIFUの妊娠成績を比較した論文データをもとに解説します。
子宮筋腫で妊娠したいとき、最初に確認すべきこと
「子宮筋腫がある=妊娠できない」ではありません。妊娠への関わり方を左右するのは、筋腫の大きさ・場所・数、そして子宮の内側(内腔)にどれだけ影響しているか、です。同じ大きさの筋腫でも、子宮の外側に飛び出しているものと、内腔を圧迫しているものとでは、妊娠への影響がまったく違います。
多くの方を診てきて感じるのは、患者さんを本当に悩ませているのは筋腫そのものよりも、「治療を受けることで、かえって妊娠が遠のくのではないか」という不安だということです。とくに30代後半以降の方では、治療後にどれくらい妊活を待つことになるのか、その期間そのものが大きな判断材料になります。
ですから、筋腫だけを見て治療を決めることはしません。年齢、卵巣機能(AMHなど)、妊娠を希望する時期、不妊治療をしているかどうか、これまでの妊娠歴——これらを合わせて、「そもそも今、その筋腫を治療すべきなのか」というところから一緒に考えます。
「子宮筋腫で手術したくない」——その気持ちにどう向き合うか
「手術したくない」というのは、とても自然な気持ちです。手術には麻酔も入院もあり、術後の痛みや、仕事・家庭への影響も避けられません。妊娠を望む方ならなおさら、「子宮にメスが入ること」「妊娠までどれくらい待つのか」という心配が重なります。
ただ、正直にお伝えすると、妊娠を目指す場合は「手術を避けること」だけを最優先にしてよいとは限りません。筋腫が子宮の内腔を圧迫している、月経量が多くて貧血が強い、流産を繰り返している——こうしたケースでは、治療を先に検討した方が、結果的に妊娠への近道になることもあります。
子宮筋腫の手術以外の選択肢にはどんなものがあるか
子宮筋腫の手術以外の選択肢には、経過観察、薬物療法、子宮動脈塞栓術、HIFUなどがあります。ただし、妊娠を希望する方では、それぞれの治療が妊娠にどう関わるかを確認し、自分に合う方法を選ぶことが大切です。
お腹を切らないHIFUとは|子宮筋腫を体外から治療する仕組み

HIFUは High-Intensity Focused Ultrasound の略で、日本語では高密度焦点式超音波と呼ばれます。虫めがねで太陽光を一点に集めると紙が焦げるように、体の外から超音波を筋腫の一点に集束させ、その熱で筋腫を変性・縮小させる——これがHIFUの基本的な仕組みです。
お腹を開いて筋腫を取り出す手術とは違い、HIFUは体外から照射するだけで、皮膚にも子宮の筋層にも大きな傷をつくりません。このため「子宮筋腫のお腹を切らない治療」「切らない治療」として知られています。お腹を切りたくない、子宮を残したい、と考える方にとっては、まず知っておく価値のある選択肢です。
ただ、誤解してほしくない点が一つあります。HIFUは筋腫を体の外に「取り出す」治療ではありません。あくまで筋腫を焼いて変性させ、小さくしたり症状をやわらげたりすることが目的です。ですから、筋腫の場所や性質によっては、HIFUよりも手術の方が適している方もいます。ここを正直に見極めることが、専門医の役割だと考えています。
子宮筋腫は日帰りで治療できる?HIFUが検討できるケース
「子宮筋腫を日帰りで治療できますか」——これもよく受ける質問です。条件が合えば、HIFUは日帰り治療として検討できる場合があります。長く仕事を休めない方、小さなお子さんの育児や介護がある方、そして妊活の時間を一日でも無駄にしたくない方にとって、入院せずに治療を検討できることの意味は小さくありません。
ただし、すべての筋腫が日帰りHIFUの対象になるわけではありません。筋腫の大きさ・場所・数、MRIで見た筋腫の性質、腸管との距離、子宮内腔との位置関係——これらを確認して、安全に超音波を届けられるかを一つずつ判断します。
むしろ「子宮筋腫 日帰り治療」という手軽さで探している方ほど、一度立ち止まってほしいと思っています。妊娠を望むなら、「日帰りでできるか」よりも、「その治療が妊娠の妨げにならないか」「治療後いつから妊活を再開できるか」の方が、ずっと大事な問いだからです。
論文で見るHIFU後の妊娠成績——腹腔鏡手術との比較
ここで、最新の論文をご紹介します。2026年に Frontiers in Surgery に掲載された、子宮筋腫に対するHIFUと腹腔鏡下筋腫核出術(お腹に小さな穴を開けて行う手術)の妊娠成績を比較した研究です。
妊娠を希望する子宮筋腫の患者さん293名(HIFU群171名、腹腔鏡手術群122名)が対象です。年齢や筋腫の大きさ・種類・数といった背景をそろえるために傾向スコアマッチングという統計手法が使われ、条件をそろえた75組どうしで比較されました。
結果はこうです。背景をそろえた後の自然妊娠率はHIFU群13.3%、腹腔鏡手術群14.7%で、両群に大きな差はありませんでした。一方、妊娠までの期間(中央値)はHIFU群13.0か月、腹腔鏡手術群17.0か月でした。
念のため強調しておきますが、これは「HIFUを受ければ必ず妊娠できる」という話では決してありません。妊娠には年齢、卵巣機能、卵管、精子、排卵、子宮内膜など、筋腫以外の要因が数多く関わります。
それでも、子宮筋腫で手術したくない方、手術以外の治療を探している方にとって、この結果は一つの参考材料になり得ます。少なくともこの研究では、お腹を切らないHIFUを選んでも、妊娠率が手術に大きく劣るという結果ではなかった——そう読み取れるからです。
ただし、この研究は後ろ向き(過去のデータを振り返る)研究で、症例数にも限りがあります。性交渉の頻度や子宮内膜の状態など、妊娠に関わるすべての因子が測れているわけでもありません。論文はあくまで参考であり、最終的な方針は一人ひとりの状態に合わせて決める必要があります。


HIFUが向いている方・慎重に考えるべき方
これまでの内容をふまえると、HIFUは次のような方にとって検討する価値のある選択肢です。お腹を切りたくない方、子宮を残したい方、手術以外の方法をまず知っておきたい方。とくに妊娠を望んでいて、妊活の時間をできるだけ失いたくない方には、知っておく意味があります。
反対に、慎重に考えるべきケースもあります。筋腫が子宮内腔に突出する粘膜下筋腫の場合、腸管が超音波の通り道にある場合、筋腫の位置的に超音波が届きにくい場合——こうしたときは、HIFU以外の治療を優先することがあります。
HIFUは万能ではない。これは正直にお伝えしておきたいことです。だからこそ、「切らないから」という理由だけで飛びつくのではなく、自分の筋腫に本当に合っているのかを、画像と経験の両方から見極めることが大切なのです。
妊娠を希望する方こそ、MRIでHIFUの適応確認を
HIFUができるかどうかは、MRI画像でかなりの部分が分かります。筋腫の大きさ・場所・数に加え、MRIでの筋腫の性質、腸管との距離、子宮内腔との関係を確認し、安全に照射できるかを見極めます。
妊娠を望む方の場合は、これに卵巣機能や年齢、妊娠を希望する時期、不妊治療の状況も合わせて見ます。筋腫を治療してから妊娠を目指す方がよいのか、それとも先に妊活を進める方がよいのか——その答えは、人によって本当に変わります。
そして治療後、いつから妊活を再開してよいかも大切な問題です。治療後およそ3か月あけることを一つの目安ですが、具体的な時期は筋腫の状態や治療範囲、子宮の回復によって変わります。自己判断で妊活を再開せず、必ず主治医と相談してください。
「子宮筋腫があるから妊娠をあきらめる」必要はありません。けれど、何も確認しないまま時間だけが過ぎていくのも避けたい。まずはMRIで、あなたの筋腫が妊娠にどう関わりそうか、そしてHIFUが選択肢になるのかを確かめるところから始めましょう。
よくある質問
子宮筋腫があっても妊娠できますか?
妊娠できる方も多くいらっしゃいます。ただし、筋腫の場所・大きさ・子宮内腔への影響によっては、妊娠率や流産率に関わることがあります。妊娠を希望する方では、MRIや超音波で筋腫の状態を確認することが大切です。
子宮筋腫で手術したくないのですが、HIFUは選択肢になりますか?
選択肢になる場合があります。HIFUは子宮筋腫のお腹を切らない治療で、子宮を残しながら筋腫の縮小や症状改善を目指します。ただし、すべての筋腫に適応できるわけではないため、MRIでの確認が必要です。
子宮筋腫で妊娠したい場合、HIFUは向いていますか?
向いている可能性がある方もいますが、筋腫の位置、子宮内腔への影響、年齢、卵巣機能、不妊治療の状況によって判断が変わります。「切らない治療かどうか」だけでなく、妊娠の妨げにならない治療かを慎重に考えます。
お腹を切りたくないのですが、子宮筋腫の治療法はありますか?
お腹を切りたくない方には、お腹を切らない治療としてHIFUや薬物療法、経過観察などがあります。子宮動脈塞栓術もありますが、妊娠を希望する方では慎重に検討します。どれが合うかは筋腫の状態によって変わります。
子宮筋腫は日帰りで治療できますか?
条件が合えば、HIFUを日帰り治療として検討できる場合があります。ただし、筋腫の大きさ・場所・数、MRIでの性質、腸管との距離などによって適応は変わります。妊娠を希望する方では、治療後にいつから妊活を再開するかも含めて相談します。
子宮筋腫の手術以外の方法にはどんなものがありますか?
代表的な手術以外の選択肢として、HIFU、薬物療法、経過観察などがあります。子宮動脈塞栓術もありますが、妊娠を希望する方では慎重に判断します。筋腫の状態によっては、手術が適している場合もあります。
HIFU後はすぐ妊娠を目指せますか?
妊娠を目指せる時期は、筋腫の状態・治療範囲・子宮の回復によって異なります。一定期間あける必要があると考えられますが、具体的な時期は自己判断せず、主治医と相談してください。
まとめ|子宮筋腫で妊娠したい方へ
子宮筋腫が見つかると、「手術しないと妊娠できないのでは」「このまま妊活を続けてよいのか」と不安になる方は少なくありません。けれど、子宮筋腫の治療は一つではありません。
子宮筋腫で妊娠したい方、手術したくない方、お腹を切りたくない方、日帰り治療を探している方にとって、お腹を切らない・切らない治療であるHIFUは、検討できる手術以外の選択肢の一つです。今回紹介した論文でも、HIFU後の自然妊娠率は腹腔鏡手術と大きな差がなく、妊娠までの期間はHIFU群でむしろ短い結果でした。
もちろん、HIFUがすべての方に合うわけではありません。妊娠を希望する方では、年齢、卵巣機能、筋腫の場所、子宮内腔への影響を含めた総合的な判断が必要です。「子宮筋腫があるから妊娠をあきらめる」「手術が怖いから何もできない」——その二択で悩む必要はありません。まずは、あなたの筋腫が妊娠にどう関わりそうか、そしてHIFUが選択肢になるのかを、MRIで確認していきましょう。
参考論文
Tang, N., Yu, J., Ran, W., Fang, C., Luo, C., Hu, L., Xu, F., & Zeng, Y. (2026). Comparison of pregnancy outcomes in uterine fibroids following high intensity focused ultrasound ablation vs. laparoscopic myomectomy: A propensity score-matched observational study. Frontiers in Surgery, 13, Article 1767535. https://doi.org/10.3389/fsurg.2026.1767535 (PMID: 41858492)