産婦人科医のワンポイントアドバイス
Q1 産婦人科に行くと超音波検査をよくされますが、超音波検査でどういうことがわかるのでしょうか?
A:超音波検査は音波を発信してその反射をとらえる方法です。婦人科で扱う超音波はお腹の上から超音波を当てる経腹超音波と膣内から超音波を当てる経腟超音波の二種類があります。
音波は水の中ではほとんど減衰しないので、膀胱や卵巣嚢腫など液体がたまっている場所は黒くなります。通常の組織は水と比べて反射が強いので、白っぽく映ります。そのコントラストの出方で診断します。
超音波検査で子宮の大きさや位置はわかりますが、その子宮の中の状態は、正確には把握はできません。子宮筋腫・子宮腺筋症が疑われる場合は腹部のMRIを受けていただく必要性があります。
Q2:子宮筋腫・子宮腺筋症の診断に、なぜMRIが必要なのでしょうか?
A:産婦人科で受ける超音波検査でもある程度の情報を得ることはできますが、より正確な診断のためには、MRIが必要です。超音波検査では見えづらい部位もMRIでは描出することができます。
子宮筋腫の数・大きさ・周りの組織との位置関係・筋腫の種類などを調べることができます。内診や超音波ではわかりにくい子宮腺筋症の診断も可能となります。また子宮肉腫などの悪性の病気との鑑別にも有用です。
典型的な子宮筋腫の画像所見
子宮と病変との境界が明らかな腫瘤がみられる
T1強調像 周囲の子宮筋層と同程度の低信号の腫瘤
T2 強調像 周囲の子宮筋層よりも低信号の腫瘤


子宮腺筋症のMRI画像
子宮と病変との境界ははっきりしません。
子宮腺筋症は子宮内膜に似た組織が子宮の筋層の中にもぐりこんだ状態です。子宮腺筋症のある部分には子宮内膜が含まれるので、白く描出されます。子宮内膜から出血が起こった場合、出血も白く見えます。黒く拡大した病変の中に子宮内膜や出血が白く点々と見え、特徴的な像を示します。

子宮筋腫か子宮腺筋症を鑑別するためにはMRIは必須の検査といえます。
Q3 子宮筋腫と言われました。症状はないのですが、治療した方がいいのでしょうか?
A:症状の程度、年齢、妊娠希望があるかどうかで判断します。子宮筋腫は良性疾患で、症状がない場合は経過観察でよいです。閉経期を迎えると筋腫は小さくなることはありますが、30から50歳くらいまでは自然によくなることはほとんどありません。
症状が強い場合は
- ホルモン療法
- 子宮全摘出術
- 腹腔鏡による筋腫核出術
- 粘膜下筋腫の場合は子宮鏡による手術
- 高密度焦点超音波(HIFU)
などがあります。大切なのはご自分のライフスタイルに合わせて治療法を選ぶことです。産婦人科医によく相談してください。
Q4:子宮筋腫になり、ホルモン療法が必要と言われましたが、どのようなものなのでしょうか?
A:ホルモン療法には大きく分けて低濃度ピルと偽閉経療法があります。低濃度ピルにはエストロゲンとプロゲステロンという2つの女性ホルモンが配合されています。避妊薬と思われるでしょうが、排卵を抑えると同時に子宮内膜の増殖を抑える働きがあり、生理痛や過多月経を減らすことができる薬です。子宮筋腫そのものには効果はありませんが、生理を減らすことで貧血を治すというわけです。血栓ができやすいという副作用があり、長期間投与には注意が必要です。
プロゲステロンだけ入っている黄体ホルモン剤(ディナゲスト)も子宮内膜に働き生理量を減らします。
偽閉経療法は一時的にエストロゲンを下げ、閉経になったような状態にします。閉経のような状態になると子宮が小さくなり、筋腫も小さくなるというわけです。私は手術の前に偽閉経療法を行って子宮を小さくし、手術しやすくする方法をよく行っています。
ホルモン療法は内服・点鼻薬・子宮内に小さな装置を挿入する方法(ミレーナ)・注射と様々な方法があります。それぞれの生活に合った方法を主治医と相談して受けてください。

Q5 ホルモン療法の副作用が心配です。
A:低濃度ピルの場合、血栓ができやすいという副作用があります。煙草をよく吸う方や乳がんや子宮頸がんの疑いのあるかた、肥満症の方などは注意する必要があります。40代の方には血栓が心配なので違う治療法に変えることも検討します。ディナゲストは血栓の心配は低いのですが、不正出血が多いことが問題になります。子宮になかに装置を挿入するミレーナの場合は長くて5年が限度です。
偽閉経療法は一時的に更年期障害のような症状になることがありますが、やめれば元に戻ります。長期に服用すると骨そしょう症がおこることがあるので注意が必要です。保険診療で実施できるのは半年と決まっています。どうしても必要な場合半年休んでまた半年治療することもあります。
ホルモン療法副作用のまとめ
| 低用量ピル | 血栓 |
| 黄体ホルモン | 不正出血 |
| 偽閉経療法 | 更年期症状 骨粗しょう症 |
Q6 子宮筋腫が何センチ以上になったら手術したほうがいいのでしょうか?
A:子宮筋腫の手術は単純に大きさだけでは画一的な基準はありませんが、筋腫が4センチ以上になると考えることが多い印象があります。筋腫が大きくても症状がない場合は経過観察のみということもあります。例えば漿膜下筋腫は外に向かって発育しているので、大きくなっても手術することは少ないです。過多月経や貧血などで日常生活に支障が出ている場合や妊娠を希望されている場合などには、積極的に手術をお勧めすることがあります。
手術には筋腫のみを摘出する筋腫核出術をお勧めし、妊娠を希望されていない方には子宮全体を摘出する全摘術も考えます。そのほか最近私どもが導入した高密度焦点式超音波を使った施術も選択肢の一つと言えます。
Q7 子宮筋腫核出手術を勧められました。腹腔鏡による手術とHIFUによる施術とどちらがいいですか?
A:私は腹腔鏡手術が始まったころから、腹腔鏡手術を多数行い、その普及に努めてまいりました。今までに1000件以上の手術を行い、腹腔鏡の良さを熟知するものです。しかし最近腹腔鏡手術を共に行ってきた世界の産婦人科医の友人たちの多くが高密度焦点式超音波治療(HIFU)を始め、よい成績を多数発表しています。「なぜ日本ではHIFUをしないの?」とよく問いかけられます。
その話に触発され、多くの論文を読むにつれ、現代に生きる女性たちにとってこの施術が朗報となると思い、導入を決意しました。
腹腔鏡手術には約30年の歴史があり、技術の進歩は著しく、安全性の高い手術です。4か所めだちにくいところ5ミリ位の穴をあけ、望遠カメラでみるように、子宮・卵巣・卵管などを直接見ることができます。観察と同時に子宮全摘・筋腫核出手術ができます。

腹腔鏡下手術 診断と治療
(堤 治著より)
対してHIFUは切開をしないこと、日帰りでも手術が可能なこと、侵襲が少ないことが魅力です。ただし、HIFUはあまり大きい筋腫には向いておらず、適応は慎重に選ばせていただいています。
また腹腔鏡手術は保険適応ですが、HIFU は日本では未承認機器であり、保険適応になっていませんので、高額なのが欠点と言えます。
手術療法のまとめの図

Q8 子宮筋腫と子宮腺筋症の違いは何ですか?
A:子宮筋腫は子宮筋にできたこぶですが、子宮腺筋症は子宮内膜に似た組織が子宮の筋層内にできたもので、腫瘍ではありません。子宮内膜症が子宮の中にできたものが子宮腺筋症です。
子宮内膜症は子宮と名前がついていますが、子宮外、主に骨盤の中、例えば卵巣などに子宮内膜が増殖する病気です。子宮内膜が月経の時に逆流して起こるといわれています。
Q9 子宮筋腫は癌になることがありますか?
A:原則子宮筋腫は良性疾患で、癌になることはありません。子宮内膜症は約1%の確率で癌になることがありますので、注意が必要です。
子宮腺筋症は私の経験では、0,1%以下と癌になる確率は低いです。
Q10 子宮腺筋症はどうして痛いのですか?
A:子宮腺筋症の痛みは子宮の収縮によるものです。月経時に子宮内膜からプロスタグランディンというホルモンが分泌され、その子宮収縮作用によって、子宮が過度に収縮し、痛みが生じるといわれています。陣痛よりも痛いとおっしゃる方もいらっしゃいます。
腺筋症の方は月経時に痛む月経困難症が強い方、排卵期に痛みのピークが来る方、月経周期にかかわらず、下腹部痛・腰痛・頭痛で悩まされる方もいらっしゃいます。
Q12 子宮腺筋症にもHIFU治療は有効ですか?
A:子宮腺筋症の治療は難しく、昔の教科書には子宮全摘と書いてありました。妊娠を希望されている場合、子宮全摘はできません。子宮筋腫なら腹腔鏡を使って筋腫だけ核出することも可能ですが、腺筋症の場合はむずかしいです。近年各国から腺筋症のHIFU治療の報告が相次いでいます。HIFUの場合、子宮に切開を入れることなく、病巣を処置できるのが最大のメリットとなります。