子宮腺筋症が妊娠に与える影響とは
不妊治療・妊娠中に知っておきたい最新エビデンス
「子宮腺筋症は本来は内側にあるはずの子宮内膜の組織が子宮の壁に入り込む病気で、婦人科の中でも厄介なものと認識されています。以前の教科書では根治術とし子宮全摘をおこなうとされていましたが、近年ではこれから子作りたい方や不妊症の方に多くみられています。今回紹介する論文では、妊娠との関係、妊娠への影響を掘り下げます」
本記事で紹介するのは、2021年Nirgianakis, K先生らによるReproductive BioMedicine Online誌に掲載された系統的レビュー・メタ解析で、子宮腺筋症と妊娠の関係を分かりやすく解説していきます。
子宮腺筋症はどのくらい多いのか
子宮腺筋症は決して珍しい病気ではありません。報告によって差はありますが、20〜35%程度の女性に存在する可能性があるとされています。症状がないまま経過する方も多く、不妊治療の過程で初めて指摘されるケースも少なくありません。
不妊治療(体外受精)への影響
妊娠率は低下する
子宮腺筋症がある場合、体外受精の成績に影響が出ることは次のデータから明白です。
- 臨床妊娠率:約30%低下(OR 0.69)
- 流産率:約2倍に増加(OR 2.17)
つまり、
「子宮腺筋症があると、妊娠しにくく、妊娠しても流産しやすい」
ということです。
卵巣刺激法によって結果が変わる可能性
興味深い点として、治療方法によって結果が異なります。
- 短期間のプロトコル(ショート法やアンタゴニスト法など)
→ 妊娠率低下・流産率上昇が顕著 - ウルトラロング法(GnRHアゴニスト長期投与)
→ 明確な悪影響は見られない
これは、アゴニストでエストロゲンを一定期間下げることにより、腺筋症の活動性を一時的に抑え、結果として、子宮環境が改善する可能性が考えられています
妊娠中のリスクはどうなるか
子宮腺筋症は、妊娠後の経過にも影響を及ぼします。重要なのは、「自然妊娠か体外受精かに関係なくリスクが上がる」点です。
妊娠中の主なリスク
- 早産:約2.6倍
- 妊娠高血圧腎症:約4.3倍
- 妊娠高血圧症:増加
- 胎盤位置異常:約5倍
分娩時のリスク
- 帝王切開:約2.5倍(条件調整後は4倍以上)
- 逆子などの異常胎位:約3倍
- 産後出血:約2.9倍
赤ちゃんへの影響
子宮腺筋症は胎児の発育にも影響することが示されています。
主なリスク
- 小さく生まれる(SGA):約2.9倍
- 低出生体重(2500g未満):約2.8倍
- 重度低出生体重(1500g未満):増加傾向
- 胎児発育不全(IUGR):約3.4倍
一方で、
- 超早産(32週未満)
- 新生児死亡
- アプガースコア低下
については、明確な差は認められていません。
なぜこのような影響が出るのか
はっきりとした原因はまだ解明されていませんが、以下のようなメカニズムが考えられています。
- 子宮内の慢性炎症
- 子宮内膜の機能低下(着床しにくい)
- 子宮の収縮異常
- 胎盤形成の異常(血流の問題)
これらが複合的に関与していると考えられています。
治療・対策として重要な考え方
不妊治療前
- 妊娠率低下・流産リスクについて事前説明が重要
- プロトコル選択(ウルトラロング法など)を検討
妊娠後
子宮腺筋症がある妊娠は「ハイリスク妊娠」として扱います。
特に注意する点:
- 血圧(妊娠高血圧)
- 胎児発育(エコーでの成長チェック)
- 出血リスク
定期的なフォローが非常に重要になります。
まとめ
子宮腺筋症は単なる「月経痛の原因」ではなく、妊娠に幅広い影響を及ぼす可能性があります。
重要なポイントは3つです。
- 体外受精の妊娠率は低下し、流産率は上昇する
- 妊娠中の合併症(早産・高血圧など)が増える
- 赤ちゃんの発育にも影響する可能性がある
ただし、適切な治療戦略と慎重な妊娠管理により、安全に出産できるケースも多くあります。
コメント「紹介した論文で、子宮腺筋症は不妊の原因になり、不妊治療の成績を下げ、妊娠中の障害の原因にもなることが理解できると思います。効果的な治療法が確立されていない中、最近注目されているのがHIFU治療です。腺筋症に対するHIFU治療の有効性については別途ご紹介する予定です。」
文献
Nirgianakis, K., Kalaitzopoulos, D. R., Kohl Schwartz, A. S., Spaanderman, M., Kramer, B. W., & Mueller, M. D. (2021). Fertility, pregnancy and neonatal outcomes of patients with adenomyosis: a systematic review and meta-analysis. Reproductive BioMedicine Online, 42(1), 185–206. PMID: 33191131 https://doi.org/10.1016/j.rbmo.2020.09.023